主な臨床症状

(ア)性比

本研究班の調査にご協力頂いた患者さんの8割以上が男性で、症状は女性で軽症な傾向がありました。過去の報告で明らかな男女差を指摘したものはありません(むしろ女性例が多い報告があります)が、X連鎖性の遺伝形式を除外できない家族例の報告(Ohdo症候群として報告されている)もあるため、性差に関連する問題は今後の重要な検討課題です。男児の診断例が目立つ理由には、外性器異常合併が男児に有意であることも挙げられます。

(イ)家族歴

家族例の報告はほとんどありません。一部例外的に兄弟例などが報告されていますが、そういった報告に対してはヤング・シンプソン症候群の診断そのものに異論もあります。

(ウ)胎生期

本研究班の調査では約7割に羊水過多を認めましたが、詳しい発症機序は不明です。後述の乳児期に認める哺乳・嚥下障害と関連するかも明らかではありません。出生前からの問題として我々は重視しています。

(エ)新生児期の特徴

出生後の呼吸障害が多くみられます。しかし、ほとんどは酸素投与などの保存的治療で対応可能で、人工呼吸管理を必要とするような重症例はありません。

哺乳障害はほぼ必発です。哺乳力が弱い、鼻からよくミルクが出てくるなどといった症状に加えて、筋緊張が弱いにも関わらず体幹のそり返りは強くて直接授乳(母乳)がとても難しいとの親御さんの訴えは多く聞かれます。そのため、経管栄養を導入される方は多いですが、経過とともに徐々に経口摂取が可能となってきます。

また、眼瞼裂狭小のため目を開けることがとても少なく、開けても視線が合いにくい、表情が少ないなどといったことも多くの方に共通するようです。

(オ)成長

本症が原因で早産や低出生体重児となることはまれです。哺乳不良を多く認めても早期から経管栄養を導入することもあってか、生後の体重増加に目立った遅れはないようです。しかし、身長は標準的かやや低い傾向にあります。

(カ)頭頚部の特徴

診断基準に含まれる眼瞼裂狭小のほか、眼瞼下垂や鼻涙管閉鎖といった眼症状に加えて、耳介前瘻孔、小顎などを認める方もいます。

(キ)感覚器

弱視、難聴は多く経験されます。医療管理が必要な程度のものが多く、成人期の生活の質に影響しうる合併症として管理は重要です。乳児期~幼児期の鼻涙管閉鎖、強い外耳道の狭窄を認める方も多いです。

(ク)中枢神経系

大きな中枢神経奇形はあまり認めませんが、一部にてんかんを合併する方もいます。

(ケ)発達・行動特性

精神遅滞は中等度から重度と言われていますが、言語表出よりも理解力の方がよい傾向にあります。乳児期には反応が乏しく発達の遅れが目立つ一方で、幼児期後期あるいは学童期以降に人懐こい性格が明らかとなり、社会性の獲得が進んでゆくのも特徴です。

(コ)心血管系異常

本研究班の調査では半数近くに先天性心疾患を合併していますが、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症など複雑でないものがほとんどです。また、過去の報告でも本研究でも肺動脈(弁)狭窄症の合併が比較的多いことが分かっています。

(サ)内分泌学的異常(甲状腺機能低下)

新生児期から軽度の甲状腺機能低下はほぼ必発で、甲状腺ホルモンの内服補充が適当とされる方がほとんどですが、ときに新生児マススクリーニングにおいてTSH異常高値で検出されるような方もいます。検査値は正常でも潜在的な甲状腺機能低下はあります。

(シ)第二次性徴

男性で第二次性徴の遅れが認められることがあるようです。女性では目立った遅れはなく過去の報告とも矛盾しませんが、月経不順は比較的多く経験されるようです。

(ス)筋骨格系異常

下肢に強い関節拘縮が特徴で、内反足は外科的治療が必要なものが多いです。膝関節の脱臼や拘縮も経験されます。上肢には関節の拘縮以外に関節の過伸展を認めることもあります。乳児期には目立ちませんが、成人期で目立つ手指・足趾が長いことも骨格特徴の一つのようです。

(セ)泌尿・生殖器系異常

男性では両側の停留精巣がほぼ必発です。陰茎も小さい傾向にあります。また、膀胱尿管逆流症や後部尿道弁が比較的多い泌尿器系合併症として挙げられます。

 

 

 

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