シルバーラッセル症候群

1. 概要
第11番染色体上11p15.5 領域の低メチル化(エピ変異)によるインプリンティング遺伝子の発現異常、 および第7 番染色体母親性ダイソミーを原因として発症する。エピ変異を原因とするものが30-50%、 第7番染色体母親性ダイソミーを原因とするものが5-10%であり、残りの約半数はなお原因不明である。 出生前後の成長障害、相対的大頭、骨格の左右非対称、特徴的顔貌、第5指短小・内彎、その他多彩な 小奇形を示す。
2. 疫学
本邦で約500~1000名(2009年インプリンティング関連疾患調査研究班報告)
3. 原因
1)エピ変異:父親由来第11 番染色体上のインプリンティングセンターとして働くメチル化可変領域 (H19-DMR)の低メチル化により、父性発現遺伝子であるIGF2 遺伝子の発現抑制が生じ、発症する。 2)第7 番染色体母親性ダイソミー:患者の7番染色体がともに母親に由来する。母親由来アリルから のみ発現する母性発現遺伝子の過剰発現、父親由来アリルからのみ発現する父性発現遺伝子の発現消失が生じ発症することが推測されているが、詳細な機序は解明されていない。
4. 症状
出生前後の成長障害、相対的大頭、骨格の左右非対称、突出した前額と小顎を伴う逆三角形の特徴的顔 貌、第5指の短小・内彎などを主な特徴とし、その他多彩な小奇形を呈する。第7 番染色体母親性ダイ ソミーを原因とする症例では、言語発達遅延や新生児期の摂食障害・多汗などが多くみられることが知 られている。
5. 合併症
発達障害、合趾症、胃腸障害、胃食道逆流、食道炎、嚥下障害、新生児期低血糖、心奇形など
6. 治療法
対症療法が中心となる。新生児期、乳児期には哺乳不良を認め遷延する経管栄養が必要な場合があるが、 年齢とともに改善する傾向にある。出生後の成長障害に対しては、成長ホルモンによる治療が可能であり、一定の効果が認められる。一般に成人では症状が軽微となることが多い。
7. 研究班
先天性異常の疾患群の診療指針と治療法開発をめざした情報・検体共有のフレームワークの確立